STAFF START
ケース September 22, 2021

アダストリア、STAFF START導入後に過去最高NPSを達成!店舗スタッフ一人ひとりの個性が光る、ECサイト「.st」のオンライン接客とは?

株式会社アダストリア 執行役員 マーケティング本部長 田中順一 さん
「GLOBAL WORK」や「niko and ...」といった人気ファッションブランドを展開し、2018年から「STAFF START」を導入しているアダストリア。同社のEC売上アップを支えているのが、店舗スタッフの活躍です。今回は、アダストリアの執行役員でマーケティング本部長を務める田中順一氏に、STAFF START導入の背景や、店舗スタッフ一人ひとりの個性を引き出すデジタル戦略、またオンライン接客を社内に浸透させる秘訣などをお聞きしました。

利用店舗スタッフ数、1年で10倍! スタッフコーデがNPS過去最高値達成に寄与した理由

―STAFF STARTの導入を決めた理由について教えてください。

当社は以前からスタイリング投稿を行っていましたが、当時は店舗やブランド単位でした。
でも、だんだんと世の中がInstagramをはじめ個の力を重要視するようになってきましたよね。こうした流れもそうですが、会社としてもっと店舗スタッフのポテンシャルに目を向けていこうと、2018年からは、個人単位のスタイリング投稿に切り替えました。使用するツールはいくつか検討していたのですが、最適なサービスって意外と少なくて。その中でも個人の投稿に特化しているSTAFF STARTならAPIの質も高く、完成されているから最短でできるだろうと。ハード面をSTAFF STARTに任せたことで、私たちは、社内制度などを設計するソフト面に注力できるようになりました。
店舗スタッフの成果をどのように評価するか、どのようなコミュニケーションで新しい文化を社内に根付かせるか。サービスを動かす裏側のソフト面を定義できたのは、STAFF STARTとのコンビネーションがあったからこそだと思っています。

―導入後の効果はどのようにご実感されていますか。

WEB事業の売り上げは毎年2ケタ前後の伸長をしていますが、中でもSNS経由の売り上げは月単位で伸びていて、全体売上をけん引しています。社内やお客様の声ベースで見ても、スタッフのデジタル上の活動が大きく貢献していると感じますね。

―約1年で投稿する店舗スタッフの数が約10倍に増えているのも大きな変化ですね。さまざまな効果につながった秘訣をお聞きしたいです。

どこまでが企業マターで、どこから店舗スタッフ個人の判断なのか、そのバランスでしょうか。
コーデ投稿のルールは半分だけ作って、残りの半分は店舗スタッフに任せました。参加も基本的に自由です。まずは100名からスタートして、半年後には300名に増員し、現在は約3000名の店舗スタッフがコーディネート投稿に取り組んでいます。
一番力を入れたのは導入後の半年間。最初の100名には本部と一緒に、店舗スタッフ投稿の道を切り拓いてほしかったんです。店舗スタッフの中にはもともとInstagramをやっている人もいたので、きっと相性の良い人がいるだろうと確信していました。店舗スタッフにはECの売上というプラス面と、個人がデジタル上に立って活躍できるんだという面白さを伝えることで、良い反応を得られたように思います。
あとは、リアル店舗で活躍している店舗スタッフたちとどう共存して、モチベーションを上げられるか。「ルール」と「面白さ」がどちらもあることで、アダストリアらしいバリエーションが出るだろうと思っています。

―店舗スタッフ一人ひとりの「個の力」を信じたことで、先程おっしゃっていたような成果が出ているんですね。

はい。店舗スタッフの投稿モチベーションが向上したので、結果的に顧客ロイヤリティを数値化する指標の1つであるNPS(ネット・プロモーター・スコア)の評価で、過去最高値を達成しました。お客様からも、「スタッフさんのメッセージがあったほうが参考になる」というご意見を数多くいただいています。

―導入時に目指した理想像がありましたらお聞かせください。

アダストリアでは、まずどうやってこの新しい仕組みを共通言語にするか、どうしたら社内に浸透されていくのかを考えました。サービスについてきちんと語られていれば、それだけ社内のみんなが意識しているってことだから。良いコンテンツであっても、お客様に認めていただけなければ、ただ自分たちが一方的にやっているだけになってしまいます。そこで、個人のスタイリング投稿を見られるコンテンツに「STAFF BOARD(スタッフボード)」と名前を付けました。
当社のECサイト「.st(ドットエスティ)」と同じように、言葉が社内で浸透するのはもちろん、お客様の中でも広がっていったら双方に認められている証だと思っています。STAFF STARTと、当社オリジナルの仕組みが良い相乗効果を発揮すれば、きっとSTAFF BOARDという言葉が色々なところで浸透するのではないでしょうか。

―オンライン接客の概念が浸透するように、社内でも取り組まれているんですね。

接客ってやっぱり個人の力が強いじゃないですか。リアル店舗だと、目の前にいる一人のお客様に対して接客することになります。するとどんなに頑張っても1日で100名に接客できるかどうか、です。でも、デジタル上なら1回で1万人に接客することだってできます。店舗スタッフにはデジタルで掛け算することで「1スタッフ:N」となる自分の影響力の大きさを実感してもらいたいですね。お客様に見てもらえる数や発見してもらえる数が増えるって、可能性と夢があることですから。

どんな身長や体型のお客様にも参考になり、ノイズにならない情報を提供する

―お客様に「STAFF BOARD」を使っていただくために、どんなことを意識されましたか。

まずは「レビュー」としての立ち位置を確立させること。商品の参考になる設計が重要だと考えました。たとえば、175cmの店舗スタッフによるスタイリング投稿は、160cmのお客様にとっては参考にならない部分が出てきますよね。なので、どんな身長や体型のお客様にも役立つレビューとしての機能を果たせることが大前提だと思っています。次に「個としての発信」を活かすこと。レビューを作っていくうちに、お客様から「いいね」という声がより集まってくるスタッフが絶対に出てくるんです。
そんな人気のある店舗スタッフのSNSアカウントをはじめ、一人ひとりのパーソナリティがきちんと出るような仕掛けをしています。「.st」上でも、店舗スタッフをフォローできる機能を用意して、好きな店舗スタッフがスタイリングを投稿すると「更新されました」というメールが届くようにしています。ファンになったお客様にとって必要な情報が届くことで、ノイズにならない状態が作られるんです。こうしてSTAFF STARTのハード面を活用しながら、ECサイトの強みも活かすことで、「STAFF BOARD」をお客様に広く浸透させることができています。

―店舗スタッフの方々にはどのような変化がありましたか。

STAFF STARTを取り入れたことで、数字の変化がとても分かりやすくなりました。個人の売上が可視化されるから、毎日の進捗を追うことができる。これが店舗スタッフのモチベーションにつながっていますね。自分の投稿したコーディネートの中で、どれが一番反応があったかというのも、自身で分かるじゃないですか。それがリアル店舗の接客にも活きてくることがあります。売り上げが上がったかどうかに関わらず、確実に良い影響をもたらしていますね。
それに、ECサイトやSNS全般をしっかりと構築していたことで、コロナ禍をきっかけに店舗スタッフが店頭に立っていないときもお客様とつながれるという確信を持ちました。デジタル上のツールが参考になり、購買に影響を及ぼすということを体感して、参加する店舗スタッフの人数もかなり増えましたね。だから会社としても、約1年半前からは人数を大幅に増やし、働き方の1つとして一丸になってやっていこうという方針に変えたんです。お客様に必要とされる濃い発信ができる“店舗スタッフ”という集団がいたから広げやすかったですね。

ツールごとの客層を理解し、ブランドや店舗スタッフの個性が溢れる情報を発信

―店舗スタッフの方々がコーディネート投稿をする際に苦労されていたことはありますか。それらはどのように克服されましたか。

ECサイト上とSNS上では、見ているお客様の層が違います。まずは、それぞれの特徴の理解を深める必要がありましたね。2つ目に、コーディネート投稿にはテクニックが必要です。ただ商品を撮影するのではなく、日常での服の着用シーンを切り出す、作った料理を自社商品の食器に盛り付けて撮影するなど、最近ではアダストリアらしいバリエーションの幅が出てきました。3つ目は、一人ひとりの個性の出し方を意識することです。

ブランドの特性と十人十色な店舗スタッフの個性がうまく合わされば、間違いなく強みが出るだろうと思っています。そこで各ブランドに「STAFF BOARD窓口」を作って、「どこをもっと強化すると良いのか」といったケアができる体制をととのえました。ノウハウは資料化して、教育専任のスタッフがブランドごとに成功例などを共有するようにしています。

―一人ひとりの個性がより引き出されるように、教育や評価にも力を入れているとお聞きしました。

ブランド一つひとつに対して、マーケティング本部のメンバーが事例を伝える時間を確保しています。コロナ禍ではZoomを活用してレクチャー会などを実施しました。会議室に店舗スタッフを集められるのは一度に30名程度までですが、オンラインをうまく使えば全国各地、100名規模の店舗スタッフの前でレクチャーすることができます。
そして、評価制度はオリジナルで設計しています。たとえば年1回、ロールプレイングコンテストのようなリアル店舗接客のオンライン版で「ベストパフォーマンス賞」を作るなど、個人やブランド単位で頑張っている人の表彰制度も設けました。ただ、評価するにしても複合的な要因があるので、今後はさらに色々な制度を作って店舗スタッフ個人の実力を可視化していきたいと考えています。

「EC」の概念や先入観を突破して、最大のマーケティングツールへ

―STAFF STARTを活用することで、今後目指している姿をお聞かせください。

まずはサイト自体が成長するように取り組み、成長に見合った作りに変えていくことですね。たくさんの店舗スタッフが登場していても、一人ひとりのお客様に合った店舗スタッフがいなければ単に「いろんな人が出ているね」で終わってしまう。たとえば「あなたにふさわしい店舗スタッフ=〇〇店・田中」と、具体的な店舗スタッフの名前が必ず出てくるような精度の高さが重要です。だから今後は、レコメンドやマッチングの質をもっと向上させていきたいですね。そして、やみくもにスタッフを増員するのではなく、各フェーズに応じた人員体制にしていくことが重要だと思っています。

―ECサイト自体は、どのように成長させていこうと考えていらっしゃいますか。

まずは「ECは物販のためにある」という概念を突破して、顧客接点を作るうえで一番重要な基盤にしたいと考えています。そして、ECサイトを最大のマーケティングツールに成長させたいですね。またお客様にとって、人と人をつなぐ情熱的な“エンターテインメントコマース”でありたい。2年以内にはその基盤を作れたらと考えています。ECではなく顧客接点と考えたほうが、店舗スタッフもより活きるのではないでしょうか。これまでのECとは違う形を体現していきたいと思っています。

 

田中順一氏

株式会社アダストリア執行役員 マーケティング本部長

カタログ通販、インターネット広告代理店を経て、2011年にアダストリアに入社。WEB事業を中心に従事し、自社ECサイト「.st(ドットエスティ)」の成長を牽引。現在は、マーケティング本部長としてEC、データ、デジタル戦略などを統括する。

株式会社アダストリア

衣料品・雑貨等の企画・製造・販売