―まず、STAFF STARTを導入する前にどのような課題があったのか教えてください。
新型コロナ感染拡大による緊急事態宣言が明け、営業を再開した後もなかなか店舗に客足が戻らないという実情がありました。一方でECの売上は急激に伸びていたので、ビューティ アドバイザー(店舗スタッフ)の接客スキルや知識を、店頭だけでなくECサイトでも発揮できるツールはないかと検討していた中で、STAFF STARTに出会いました。
これからのユーザー体験を考えたときに、お客さまが場所や時間を問わず購入できるオムニチャネルへの取り組みは欠かせないという意識はコロナ禍前からありました。ただ以前は、「ECサイトで売れると、自分たち(実店舗)の売上にならないんじゃないか?」という不安感がスタッフたちにあったようです。
そのような状況下で、新型コロナが発生。実店舗の営業自粛を迫られる中、スタッフたちもECサイトで売る必要性を感じ始めたのではないかと思います。会社としても、ECサイトへの貢献度が店舗や個人の評価につながるよう、インセンティブの見直しを図っていたタイミングでもあったので、STAFF STARTを導入し店舗スタッフがECでも接客する、という新しい取り組みはスムーズにスタートできました。
―STAFF STARTを導入してから、どのような効果がありましたか?
今までECサイトを訪れたお客さまの中には、店頭で見てから決めたい、決済など手続きが面倒といった理由で購入に至らない方も多くいらっしゃいました。しかしSTAFF STARTを導入後、明らかにECを利用する方の購入率に変化がありました。そこに寄与しているのが、店舗スタッフによるコンテンツです。従来の購入率(店舗スタッフの投稿コンテンツを見ないでお買い上げいただく割合)より45%高いという結果が出ています。スタッフによるリアルな“口コミ”投稿が、お客さまの背中を後押ししているのではないかと分析しています。
―現在のスタッフの皆様のSTAFF START利用状況について教えてください。
STAFF STARTのアカウントは全国120店舗のスタッフに付与しており、そのうち200~300名が定期的に投稿しています。特に投稿に積極的なスタッフの割合は、3~4割くらいですね。お客さまの中には「ECサイトを見て来ました」と言って店頭に来られる方もいらっしゃるので、そうした声もスタッフの投稿モチベーションになっているようです。
―皆様の投稿のようすを見て、いかがですか?
スタッフは、ナチュラルコスメブランドの世界観を再現することに積極的で、特に本部から投稿に使う素材やツールを用意しなくても、各自が店内のお花や装飾をうまく使って表現してくれています。中には自宅のお洒落な空間を利用して撮影するスタッフもいます。私たちの想像以上に、スタッフが楽しみながら投稿してくれているのは驚きでした。
―STAFF START導入後、スタッフの皆さんに何か変化はありましたか?
コロナ禍以前と違い、お客さまのお顔や肌に直接触れるのが難しくなったりと、接客自体が難しくなってしまいました。これまでと同じやり方で頑張ってもなかなか成果に結びつかない、やりがいを感じないなど、スタッフももどかしさを感じていたと思います。そうした中で、STAFF STARTの導入はモチベーションアップになっています。
STAFF STARTは、自身の接客スキルやコンテンツ作りのセンスをオンラインで表現し、売上につなげていくというものなので、店舗の立地や接客経験の多さが有利となりやすい店頭接客とはまた違う成果が出ることもあります。そのため、これまでスポットライトが当たりにくかった地方店のスタッフや、勤続年数が短い新人スタッフも投稿に意欲的になっています。またオンラインでの成果が可視化されたことで、より店頭接客にも力が入るなど、あらゆる方面でポジティブな相乗効果が生まれていると感じます。
―STAFF STARTを導入してから、何か「接客」における新たな発見はありましたか?
サービスへの理解を深めるため本部の人間も自分たちで投稿するようにしているのですが、「文字」にすることで、製品知識として不足している部分が見つかったり、他の方の投稿から学ぶべきものに気づいたり、接客スキルの見直しの良い機会になっています。たとえば製品の質感やテクスチャーについて紹介する時、店頭ですと、お客さまの目の前で見てもらえるので詳しい説明はいりませんが、ECサイトではそうした質感まで言語化する必要があります。
また自分で投稿すると、どうすれば投稿の閲覧数が上がるか分かるので、お客さまが本当に求めていることを理解する助けになります。
このようにECサイトでの表現方法は店頭接客とは違う難しさがあるので、対面接客では得られないスキルにつながるという発見があります。得られるものが大きいので、店長やエリアマネージャーの中には、必ず自分たちが管轄するスタッフや店舗に投稿を勧めているという人もいます。
―STAFF STARTを通じて成果が出ているスタッフや店舗に共通していることはありますか?
投稿に積極的なスタッフがいる店舗は、「面白いから一緒にやってみようよ」と、どんどん全体を巻き込んでいますね。
導入して約1ヶ月たった頃、何人かのスタッフが投稿の閲覧数や売上をすごく伸ばすなど、頭角を現し始めました。その人たちは必ずしも店長や、ベテランスタッフというわけではありません。接客経験の浅い新人スタッフも含まれています。彼女たちはSNSに慣れているので、STAFF STARTの利用においても、成果を出しやすいのかもしれません。オンライン接客で売上を伸ばしている若いスタッフが、店長に画像の撮り方や投稿の仕方を指導するという立場が逆転したような現象も目にします。
―スタッフによる投稿コンテンツで、投稿の閲覧数や売上の実績をあげる秘訣とは何でしょうか?
投稿の技術もですが、「モチベーション」と「継続」が大事かなと思っています。なぜなら、投稿の閲覧数や売上は、投稿数の多さに比例するからです。自分の投稿を見てくれるお客さまがいて、どの投稿が売上につながっているか分かってくると、改善自体が楽しくなるようで、こちらから言わなくても、スタッフ自らどんどん工夫し始めるという好循環が生まれます。
中には、自分でキャッチコピーを考えるなど、自発的に新しいアイデアを取り入れているスタッフもいます。その姿は、本当に私たちの期待以上でした。また普段から頑張ってくれて投稿しているスタッフのコンテンツは、キャンペーン時のプロモーションに活用することもあるので、そうした施策もモチベーションアップにつながっているようです。
―今後、STAFF STARTの動画投稿サービス「PLAY」の活用も始まりますが、動画の使い方や効果についてどのようにお考えですか?
製品ページの画像だけでは伝わり切らない部分で、動画を活用していきたいなと考えています。質感やテクスチャー、またスタッフが普段どんな風にケアをしているかなど、製品の魅力を十分に伝えたいからです。画像投稿のなかでも、使い方のポイントを紹介したものが読まれる傾向にあります。また、動画はよりスタッフの個性が伝わるので、スタッフのファン作りにもつながるのではないかと期待しています。
―御社は、ライブコマースにも積極的に取り組んでいらっしゃいますよね。
ライブコマースは、演者の私たちもワイワイ楽しみながら、製品の魅力を伝えられるよう意識しています。回数を重ねてきたので最近はどういう方が見てくれていて、購入に繋がるのかということも分かってきました。
台本はガチガチに作り込み過ぎると、演者も動きが固まってしまうので、基本的な流れは作りつつも、お客さまからいただいたコメントにも都度反応するなど、ライブ感を大切にしています。
―ライブコマースに出演しているスタッフの方は、どのように選定しているのでしょうか?
今ライブコマースに出演しているスタッフの多くは、自ら立候補したスタッフです。社内オーディションを行っているので、得意分野などをじっくり聞いて選抜しています。当社は限定製品が3週間に一回と頻繁に出るので、スピード感が求められます。「PLAY」を導入したら、入れ替わりが速い限定製品や新製品の告知に使っていきたいと思っています。製品の紹介動画に出演するスタッフもオーディションで選出しており、今選考を進めているところです。
―今後、目指したいECコマースの在り方や、オンライン接客の形などあれば教えてください。
店頭ならでのリッチな体験をオンラインでも提供できる場にもしていきたいですし、逆に店頭ではできない体験を楽しんでいただく場にしていきたいという思いもあります。
また、以前からオフラインの接客コンテストを何度も実施してきたので、そのオンライン版にもチャレンジしたいですね。スタースタッフにはインフルエンサーとして、もっと社内で活躍の場を広げていってほしいです。
西岡由美氏
ロクシタンジャポン株式会社 リテール営業本部ストアオペレーション アシスタントマネージャー
2011年ロクシタンジャポン㈱入社。店舗でストアマネージャーまで経験し、全国約800名が参加する接客コンテストにて最優秀賞2年連続受賞。2015年より本社の人材開発チームに異動。その後フィールドトレーナーとして新製品販売アクションプラン作成や強化店OJTに従事。2020年より新設のソーシャルセリングチームにてSNSを活用した販売促進や出演者のトレーニングに携わっている。
冨山純子氏
ロクシタンジャポン株式会社 リテール営業本部ストアオペレーション
2010年ロクシタンジャポン㈱入社。店舗でストアマネージャーを経験し、その後エリアマネージャーとして店舗管理とスタッフの育成に携わる。2018年より現場での経験を活かし、本社ストアオペレーションにて直営店オペレーションスタンダード化や店舗とのコミュニケーションを行う。2020年より新設のソーシャルセリングチームにてSNSを活用した販売促進や出演者のトレーニングに携わっている。