木村氏:店舗への集客が厳しい昨今、ナノ・ユニバースでは「STAFF START」「LINE STAFF START」をいずれも活用したEC戦略やデジタルシフトを活発化させています。その一方で、いかに店舗に集客をするかも大きなテーマです。
そうした課題について社内で議論を重ねる中で、店舗集客の実現においては一人ひとりの販売スタッフが「セールススタッフ」として自らの顧客を抱え、積極的にコミュニケーションをとれることが必要という考えに至りました。
当時、お客様とのコミュニケーションというと、メンバーズアプリ会員に向けたプッシュ通知やメルマガ配信などの一方的な方法しかなく、また「会員=顧客」という関係を完全に作りきれてはいませんでした。全購入者が対象となる会員プログラムは、ブランドエンゲージメントが高い方も、たまたまご来店いただいただけの方も含まれています。送付する内容もテンプレート化されているものが主で、エンゲージメントを高めて「顧客化」を図るコミュニケーションには課題がありました。
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こうした課題が浮き彫りになったことと、当時すでにお声がけを頂いて一部社内でトライアル運用を進めていたこととが重なり、LINE STAFF STARTの正式導入を決めました。お客様と販売スタッフが相互コミュニケーションできるツールとして、これまでにない有用性の高さが導入の決め手となりました。
羽賀氏:主に二つの軸で活用をしています。
一つ目は、一斉配信的なアプローチで「友だち限定クーポン」や人気アイテムの販売告知など、汎用性のある内容をお送りするケース。
二つ目は、何度も顔を合わせていたりオンラインでコミュニケーションを重ねているなど関係性の深い顧客に対して、個別化されたメッセージをやり取りするケースです。お客様が気になっていたアイテムの入荷連絡や、ニーズに合った商品のご提案、なかには次回の来店アポイントを取るケースもあります。また自身のSTAFF STARTのコーディネート投稿をアイテム選びの参考にお送りするなど、ECのコンテンツを活用しながらレベルの高いご提案をしているスタッフも出てきています。コミュニケーションのタイミングや内容については基本的にはスタッフの裁量に任せているので、様々な工夫が生まれていますね。
木村氏:接客の中でお客様とコミュニケーションを重ねたうえで「ご希望のアイテムが入荷したらご連絡するので、LINEを友だち追加していただけませんか」というようなお声がけを理想としています。しかし、もちろんそうしたやり取りが交わせるケースばかりではありません。個別にお声がけできなかった場合でも、レジ待ちの際に全てのお客様に友だち追加をお願いしています。
実は導入当初は一部のお客様にしか提案していませんでした。例えば試着だけしてほとんど会話なくレジに並ばれたお客様に対して、すぐに「LINE交換しませんか」というのは唐突感がありますし、それで顧客になるかというと可能性は高くはないかもしれません。スタッフからも同様の声があがっていました。
ただ、当たり前ですが提案しなければLINEの友だち数は増えませんし、そうなると見込顧客数も増えていきません。まずはお客様との関係作りの『入り口』を作ることが大事だという考えで、全てのお客様に友だち追加の提案をして、ご了承いただけたならそこからLINE上での相互コミュニケーションを通じてより深い関係性を育てていけばいいという戦略に切り替えました。
もちろん、友だち追加を依頼する際にはお客様にもメリットがあることを伝える必要があります。その一例がクーポン配信であり、他にも購入商品のメンテナンス情報や、おすすめアイテムの入荷予定といった営業トークから友だち追加を促す方法もあります。そうしたトーク集をスクリプト化して店舗に周知し、全店で精力的に案内に注力した結果、現在では毎週一定のペースで友だち数が増加しています。そのなかには店舗で購入に至らなかった方に対して「(店舗になかった商品が)入荷したら情報をお送りしますね」と案内し、友だち追加に至っているケースもありますね。
木村氏:普段の生活に溶け込んでいるLINEでコミュニケーションがとれる点は、我々にとってもお客様にとってもメリットが大きいと感じています。アプリはわざわざダウンロードしていただく必要がありますし、電話でのコミュニケーションは何かと敬遠されることも多い。使い勝手の面から見ても、留守番電話にメッセージを残すよりもLINEに書き込んだほうが記録にもなりますし、好きなタイミングでやり取りできて便利です。お客様にとっても、日常の動線に組み込まれているLINEでのやり取りはコミュニケーションコストが小さく、自然と情報を摂取していただけているのではと感じています。
羽賀氏:ブランドからでも店舗からでもなく「販売員から」発信するからこそ、高い情報到達率を発揮していると実感しています。スタッフからの発信とすることで、コミュニケーションの内容や視点は、よりお客様に近づいていきます。たとえば、札幌のスタッフが自身の顧客に「寒くなってきた今、おすすめアイテム」とタイムリーに発信できたとしても、本部から一斉配信のアプリでは難しい。パーソナライズされた情報が届くことで親近感が生まれ、ブランドのLINE公式アカウントからの発信に比べても閲覧率は格段に上がっていると感じています。
木村氏:LINE STAFF START経由の顧客のCVRが圧倒的に高いことは大きな成果だと感じています。直近のフェア開催時には、LINE STAFF STARTを通じたクーポン配信のCVRが、メンバーズアプリ経由のクーポン配信を上回りました。メンバーズアプリで同様のクーポンを配信してもここまでの成果はなかなか出ません。
やはりLINEだとベースの開封率が高いうえ、たとえ通知をオフにしていたとしてもアプリそのものを開くシーンが多いですし、スルーされにくい。そういった点も結果に奏功したと分析しています。
また、きちんと「顧客数」が把握できたことで売上予測が立てやすくなったことも大きな成果です。例えばクーポンの費用対効果を検証する場合には、友だち数と平均CVRを掛け合わせれば売上が予測できます。
従来のメンバーズアプリ会員のように、LINEにおいても登録している顧客のエンゲージメントにバラつきが生じ、その結果CVRが低下する可能性がないとは言い切れませんが、個人対個人との関係性においてそうしたリスクはかなり低いと考えています。
もちろん、良好な関係性を構築するために定期的にコミュニケーションをとる、やり取りの内容がクーポン情報ばかりにならないようにするなど、いくつかの点には気を配りながら運用を進める必要があると思っています。
木村氏:非常に重要なことだと感じていますが、会議の際に店長からスタッフの名前が出ることが増えたんです。これまで可視化されていなかった、スタッフとお客様との個別の接客が見えるようになり、優れた人材や事例がバイネームで挙がるようになりました。
今後はそうした成果をスタッフ自身により還元できるよう、インセンティブや評価の制度を導入していく予定です。さらなるモチベーションアップに繋げていってもらいたいですね。
羽賀氏:お客様にとっては、店舗スタッフとのコミュニケーションがより密にできるようになったことでエンゲージメントが高まっていると同時に、店舗への「特別感」が生まれているように感じています。今後、繋がりを持ったお客様の中から、特定のスタッフのファンになっていただいたり、行きつけのように通ってくださる方も生まれてくるのではと期待しています。
木村氏:店舗スタッフと顧客との結びつきを強めながらも、店舗への来店だけによらないO2O戦略を展開していきたいと考えています。
スタッフと顧客との密度の高いコミュニケーションを軸に、購入を急ぐシーンではECに誘導させて頂いたり、一方、LINEで事前にECの情報をカタログとしてご覧いただいたうえで店舗でのフィッティングにお誘いするなど、オフラインとオンラインの相乗効果で、より便利な購買体験を提供できればと考えています。
羽賀様:LINE STAFF STARTを活用して、スタッフの中からLINEの友だち数が5,000人を超えるようなマイクロインフルエンサーを誕生させようという取り組みも展開しています。多くの顧客に影響を与えられるスタッフが生まれてきてくれたらいいなと思いますね。
店舗スタッフがお客様とLINEで繋がる、新たな接客体験です。従来は企業や店舗単位で発行されているLINE公式アカウントをスタッフ個人が持つことで、LINEを通じておすすめの商品を動画で一斉配信したり、個別チャットでパーソナライズされた情報やクーポンを配信することが可能です。さらに、スタッフのLINEを通じた売上を可視化。店舗スタッフの評価につなげることができます。
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株式会社TSI
ナノユニバース事業部 販売統括セクション プロパー店統括
木村亮介氏
2007年、株式会社ナノ・ユニバースへ販売スタッフとして入社。店長、エリアマネージャーを経験し、本社へ異動。人事マネージャーなどの役職を経て、株式会社TSIへの一社統合後、現在は販売統括として、ナノ・ユニバース全店舗を統括指揮。
株式会社TSI
プラットフォーム本部 デジタルプラットフォーム部 OMOソリューション課
羽賀 悠平氏
2014年、旧株式会社ナノ・ユニバースへ販売スタッフとして入社。
関東の店舗スタッフを経て、現在のプラットフォーム本部 デジタルプラットフォーム部 OMO課へ。
STAFF START,LINE STAFF START、SNSを中心にスタッフのデジタル推進、活用支援を担当。
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