STAFF START/薄井崇史(以下、薄井):本日は株式会社アルペンの秋山さんをゲストにお迎えし、OMO戦略についてお話をうかがいます。聞き手を務めます、STAFF STARTの薄井と申します。私自身スポーツが好きでAlpen TOKYOさんにも何度も足を運んでいるので、今日のお話を楽しみにしておりました。
ピーディーシー株式会社/塚谷尚也氏(以下、塚谷氏):ピーディーシーの塚谷と申します。これまで大型商業施設でのデジタルサイネージの導入を多く手掛け、現在は事業戦略部の部長としてデジタルサイネージを活用した新たな顧客体験や従業員体験の創出に取り組んでおります。今日はアルペンさんとの取り組みを皆様にお話しできればと思います。
それでは秋山さんからも、まずは自己紹介をお願いします。
株式会社アルペン/秋山朋大氏(以下、秋山氏):株式会社アルペンの秋山です。店舗のオペレーションを管轄する、店舗サポート部で責任者を務めています。本日はそのなかで取り組んでいるOMOの推進についてお話できればと思います。よろしくお願いします。
秋山氏:株式会社アルペンは、スポーツ用品販売を主軸とする企業です。なかでも大きく三つの業態を展開しており、1つ目は総合スポーツショップの「スポーツデポ」。2つ目はゴルフ専門店の「ゴルフ5」。3つ目は5年前にオープンした体験型アウトドアショップ「アルペンアウトドアーズ」です。
そんな「スポーツ」「ゴルフ」「アウトドア」の聖地として、アルペングループ史上最大となる旗艦店舗『Alpen TOKYO』を2022年4月にオープンいたしました。この『Alpen TOKYO』は、新宿東口のユニカビルを舞台に、地下2階から地上8階までの全10フロアで展開する超大型店舗です。
3721坪という広大な売り場面積、新宿駅前という圧倒的なトラフィック、そして豊富な品ぞろえと膨大な商品量を持つ点で、これまでの店舗とは規模が大きく異なります。こうした特徴を踏まえて「Alpen TOKYOをOMOの旗艦店として位置付け、積極的な情報発信の場としても活用していきたい」といった経営戦略的な役割が与えられました。
秋山氏:従来、アルペンではOMOを具現化するため二通りの捉え方をしてきました。
1つ目は、オンライン‐オフライン間での送客。2つ目はオンライン‐オフライン間での社内リソースの活用です。それぞれ、これまでの取り組みを交えてご説明します。
オンラインからオフラインへの送客を目的として、アルペンでは店頭受け取りサービスを実施しています。これはECサイト上で欲しい商品があった場合に店舗での取り置きができる仕組みです。配送を待たずに急ぎで商品が欲しい場合や、フィッティングしたい場合に特にニーズが高く、安心感にも繋がるとお客様に好評いただいているサービスです。
反対にオフラインからオンラインへの送客としては、バーコードやQRコード検索を使った施策に取り組んでいます。店舗で商品を見てもその場で購入を即決できなかったり、家族と相談したいというケースも少なくありません。そうした際に、アルペンのアプリから商品バーコードをスキャンすれば、該当商品のECページに簡単にアクセスできる仕組みを構築しています。サイト上でお気に入り登録をしておけば、後日の検討や購入もスムーズに行っていただけます。
このような形で、オンラインからオフライン、またはオフラインからオンラインへの送客を実現しています。
次に社内リソースの活用についてです。店舗スタッフというオフラインのリソースをオンラインでも効率よく活用して、オンラインの買い物体験をより良いものにするため、アルペンではSTAFFSTARTを導入しています。ひとつは、アパレル各社も活用しているコーディネートの投稿です。また、スポーツは専門性の高いアイテムも多く、そういった場合は、専門スタッフによるレビュー投稿を行っています。
薄井:アルペンさんの店舗では、キャンプギアの展示など五感で得られる体験がたくさんあります。一方で一般的なECサイトだと、アイテムの基本的なスペックは理解できてもやはり得られる情報量や質に乖離があります。そこにスタッフさんの持つセンスや経験を視覚的に載せられれば、リアルな店舗に近づけることができるのではないか、という発想を起点にSTAFFSTARTをご活用いただいています。
例えば、実際の店舗ではスタッフさんがテントの中で両手を広げたり寝袋を並べてみたりすることで、お客さんは使用時のサイズ感を掴むことができます。そうしたリアリティのある「接客」をSTAFFSTARTの投稿コンテンツとして作成することで、オンライン上であっても接客の質があがり購買が増えるということを実現しています。
秋山氏:反対にオンラインリソースをオフラインで活用する例としては、自宅直送サービスを実施しています。
リアル店舗での欠品、該当商品の取り扱いが無いという場合、従来は店舗への取り寄せを行い、お客様には再度来店をお願いしておりました。しかしこのやり方では、お客様にとっては手間も時間もかかり、売り逃しといった機会損失にもつながります。
そこで、店舗ですぐに該当商品がお渡しできない場合、スタッフがサポートしながらECサイト上で購入いただくオペレーションに切り替えました。代金は店頭でお支払いいただき、商品は自宅までお届けします。
お客様の二度手間も省けるうえ、店舗の欠品の防止やECの在庫の有効活用にもつながる施策です。
秋山氏:こうした様々なOMO化に取り組んできたアルペンですが、従来の店舗とは大きく異なる『Alpen TOKYO』の出店に際しては、店舗オペレーションの観点からいくつかの課題が浮かび上がりました。
1つ目はこれまでのやり方では接客が行き届かない可能性があるという点。二つ目は、演出物の差し替え作業の負担が膨大である点で、いずれもその圧倒的なトラフィックゆえに危惧される課題でした。
さらなるOMOの進化が求められた結果、辿り着いたのが全140台のデジタルサイネージの導入でした。
デジタルサイネージを活用すれば、STAFFSTARTの投稿やYouTube動画など、あらゆるコンテンツを投影できます。これは「積極的な情報発信の場として店舗を活用したい」という旗艦店における経営戦略にも合致します。
そして何より、今まで以上にシームレスにオンラインとオフラインを繋ぐことができれば、懸念されるリソース不足を解決できるのではないかと考えました。STAFFSTARTの投稿を店頭で投影することで、店舗での接客を補完できます。演出物もオンライン化されることで差し替え工数の削減、加えて印刷作業やそれにかかるコストもカットできます。
秋山氏:ただ導入に際しては、「膨大なコンテンツを果たして管理できるのか」という懸念がありました。140台のデジタルサイネージをコントロールしながら、投影の切り替えやコンテンツの管理ができるかという点には不安がありました。
複数のベンダーさんを検討した結果、アルペンではピーディーシーさんのOneGATEの仕組みを採用、導入しています。決め手となったのは、140台のコンテンツ管理における配信システムSTB(セットトップボックス)の有用性の高さと、STAFFSTARTとも連携しているという機能性の高さでした。
塚谷氏:OneGATEはデジタルサイネージのクラウド型情報プラットフォームです。店舗に設置しているSTBとディスプレイがOneGATEのクラウドに繋がっていることによって、全国の店舗で情報を一元的にタイムリーに配信できる仕組みをもっています。
外部のオンラインサービスともデータ連携をしており、なかでも今最も力を入れているのがSTAFFSTARTとの連携です。コーディネート投稿やスタッフレビューといったキャッチーなコンテンツは売上にも関与する重要な要素ですが、これまではオンライン上のみで完結していました。店頭というオフラインの場においても、そうした信頼性の高いコンテンツの存在が購買を後押ししうるのではという発想から、STAFFSTARTとOneGATEの連携が実現しています。
塚谷氏:ここからはアルペンの秋山さんから、OneGATEのより具体的な活用事例についてお話を伺えればと思います。
秋山氏:ありがとうございます。現在Alpen TOKYOでは、アパレル売り場のコーナーごとにサイネージを配置し、該当する商品を使ったコーディネート投稿を15秒ごとに切り替えながら投影しています。
当初不安があった運用面ですが、各サイネージとSTAFFSTARTの投稿につけたハッシュタグが連動する仕組みなので分かりやすく、便利に活用できています。きちんとサイネージとハッシュタグを紐づけさえしておけば、違うブランドの投稿が流れるようなこともなくコンテンツも簡単に管理できます。
サイネージには他に、STAFFSTARTのスタッフレビュー投稿も投影しています。『専門性が高いギアやアイテムを購入する際に、いくつかの商品を比較したい』というお客様のニーズに応え、ピーディーシーさんに依頼してアイテムの同時比較ができるようなアルペン独自のレイアウトを作成してもらっています。
また、キャンペーンなどのプロモーションやサービス案内、SNS動画といった自社のコンテンツに加え、アルペンで扱う各メーカー様のブランド動画や商品紹介動画なども投影しています。エスカレーター横にもサイネージを設置しており、店内の移動中においてもアピールの機会を創出。店内各所で様々なコンテンツが容易に切り替えられますので、サービスや取り組みの認知に繋げています。
秋山氏:先述した従来のOMOの取り組みは、一方的な送客、一方的なリソース活用で、どちらかというとO2Oの要素が強い内容でした。サイネージを導入したことでオンラインとオフラインがさらに繋がり、真のOMOへと一歩進化させることができたと考えています。
例えば、オンライン―オフライン間の送客においては、相互に送客できる仕組みへと進化を遂げました。店頭のサイネージからECサイトへの流入が図れるだけでなく、ECサイト上で吟味したうえで「店舗に取り置き」を選択して再度店舗へ足を運んでいただく、こうした回遊の仕組みが実現できました。
社内リソース活用にも相互性が生まれています。スタッフによるSTAFFSTARTの投稿コンテンツは、ECサイトおよび店頭サイネージどちらでも活用しています。それだけでなく、ECサイトで作成する特集ページに組みこんだり、Instagramの投稿と連動させたり、ブログなど様々な接点で活用しています。サイネージのない店舗では、出力して紙の演出物として使うケースもあります。
さらには、スタッフによる詳細な商品レビューが新人育成のツールにもなることから、従業員教育資料としても活用しています。このように社内のリソースを、様々な方法で非常に有効的に活用できていると考えています。
今回、STAFFSTARTとOneGATEを導入したことで、店頭とデジタルのコンテンツを有機的につなげることができました。そのおかげで、スタッフの専門性という重要なリソースを軸にしながら「O2O」から「OMO」への進化を実現できたと感じています。
薄井:本日は貴重なお話をありがとうございました。
「アルペン」のSTAFF START 事例インタビューはこちら
https://media.staff-start.com/post/interview-alpen/?utm_source=ss_site&utm_medium=seminarreport&utm_campaign=2303seminarreport
PDC サイネージ活用事例はこちら
https://www.pdc-ds.com/works/alpentokyo
株式会社アルペン
店舗サポート部長 兼 人材戦略室長
秋山 朋大氏
2001年3月アルペンに入社。その後10年間の店舗勤務の後、店舗オペレーションを管轄する「店舗サポート部」の前身である、業務改革プロジェクト、業務改革部を経て2018年に店舗サポート部長に就任。2020年から社員の「採用」「人事異動」を管轄する人材戦略室長も兼務。店舗側の導入責任者としてリアル店舗で活躍するスタッフの強みを生かすOMO戦略の一環としてSTAFFSTARTの導入・定着化を推進。
ピーディーシー株式会社
事業戦略部 部長
塚谷 尚也氏
2006年ピーディーシー株式会社入社。営業として日本、中国、ASEANの大型商業施設に向けたデジタルサイネージ(ハードウェア・システム・コンテンツ)の導入コンサルティングから実装・運営業務までを牽引。現在は事業戦略部の責任者として、デジタルサイネージと顧客企業の持つデータ資産を連携し、実空間での新たな顧客体験(CX)・従業員体験(EX)の創出に従事する。
株式会社バニッシュ・スタンダード
Sales & Marketing Unit Head of Sales
薄井 崇史
Webマーケティングツールを提供するシルバーエッグ・テクノロジー株式会社で、クライアントへの導入提案から、パートナー企業とのアライアンスの構築などを経験。その後、ランサーズ株式会社を経て、2020年11月に株式会社バニッシュ・スタンダードに入社。営業責任者として、ファッション業界をはじめ、化粧品・家具・家電・食品・小売など、様々な業種の「スタッフのDX化」をSTAFF STARTの提供を通じて支援している。