STAFF START
セミナーレポート February 2, 2022

化粧品・美容業界の最新マーケティングDX!コーセーが語る次世代の顧客体験とは

コロナ禍で消費者のオンラインシフトが進み、美容業界でもDXの本格化に向けて動き始める企業が増えています。ソーシャルディスタンスを確保するために、“触れる”カウンセリングの機会が減っている今日、多くの企業がデジタル上での「顧客体験」向上を模索されているのではないでしょうか。 そこで、今回は店頭接客レベルのオンラインカウンセリングを構築されてきた株式会社コーセーの進藤氏と、消費者とコスメブランドをつなぐ世界最大級のビューティー&ファッションテックプラットフォームを運営するパーフェクト株式会社の磯崎氏を迎え、STAFF START代表の小野里が美容業界のDX最新情報や、今後の展望をお伺いしました。

第1部:No.1スタッフは月間最高売上1億円突破!販売スタッフの力を最大化するSTAFF START

まず、弊社バニッシュ・スタンダード 代表取締役の小野里より、化粧品業界でも導入が広がっているSTAFF STARTについて説明をさせていただきました。

利用ブランド1600以上!店舗スタッフの接客をECサイトでも実現

小野里:STAFF STARTは、今回ゲストにお越しいただいているコーセーさんでもご利用いただいているオンライン接客サービスです。例えば、スキンケア商品やメイクアイテムをECで販売する際、従来の商品詳細をテキストだけで記載するのではなく、実際に商品を知っている店舗スタッフが写真や動画、レビューなど様々なコンテンツを駆使してオンライン接客を行うことが可能です。店舗スタッフが、店頭だけでなくオンライン上でも活躍できる場を提供しています。

例えばコーセーさんのWEBサイトでは、「スタッフレビュー」からスタッフさんが撮影したアイテムの写真を見ることができます。カラーバリエーションやテクスチャーなどを店頭で接客しているかのようにレビューしているため、お客様はEC上でも商品の理解を深めることができます。もちろん、「スタッフレビュー」ページからそのまま商品を購入することも可能です。

現在は、アパレル業界を中心に1600以上のブランドにご利用いただいています。皆さんも、お好きなアパレルブランドのECサイトで買い物をする際に、店舗スタッフのスナップやコーディネート写真をご覧になったことはありませんか?その多くは、STAFF STARTを通じて投稿されたものです。また最近では、百貨店や家具・家電量販店など、導入企業の幅も広がっています。

例えばニトリさんでは、「これらの家具を組み合わせると、こんな雰囲気のお部屋に仕上がりますよ」が一目でわかるディスプレイを店舗スタッフさんがスタイリングし、撮影した画像をECサイトに投稿してオンライン接客されています。スポーツ用品専門店のアルペンさんでは、従来の商品ページだけでは伝えるのが難しいテントの組み立て方を、店舗スタッフが動画に撮って、実際に組み立てた体験をコメントとともに伝える、といった実例もあります。ECサイトでも、商品の知識や経験が豊富な店舗スタッフが商品の魅力をPRできるという点が、STAFF STARTの強みでしょう。

店舗スタッフのDXサービス「STAFF START」とは?

日本全国のスタッフがフラットに活躍できる世の中へ


STAFF STARTを提供するなかで感じた変化のひとつに、、地方店や郊外店のスタッフの売上向上があげられます。これまでは銀座や表参道、原宿、渋谷、新宿…といった都心の店舗が立地上有利で、売上を上げていました。でも、ECサイトではこうした環境の差がなく、全国のスタッフの実力がフラットに発揮されます。そのため、接客力がある地方のスタッフの活躍の場が広がり、EC売上に貢献できる機会を平等に提供することが可能です。STAFF STARTを利用するスタッフの年齢層も20〜50代と幅広く、月2000万円の売上実績を持つ40〜50代のスタッフもいらっしゃいますね。

ちなみに、STAFF STARTを通じてもっとも売上の高いスタッフは、EC上で月間1億円、年間7億円売り上げています。実店舗ではなかなか考えられない数字ですよね。そもそも、店頭に来られるお客様の人数は、多くて1日100〜1000人ではないでしょうか。でも、オンライン上なら10万〜100万人の来店・接客が可能です。お客様のオンラインシフトが進む現在、お客様はスタッフのレビューや発信を信頼して、お気に入りのスタッフから買う時代になっています。

店舗スタッフが積極的にオンライン接客を行う仕組みがつくれた最大の理由に、STAFF STARTの「評価機能」があります。店舗スタッフ個人のEC上の売上を企業はもちろん、スタッフ一人ひとりがアプリでチェックすることができます。自分の投稿からお客様が商品を購入した場合は、スタッフのスマホにプッシュ通知でお知らせが来たり、スタッフ個人の販売力を測る通信簿のような機能があるほか、企業内・ブランド内で自分がどのくらい売り上げているのか、ランキングを見ることも可能です。自分の投稿がEC売上に貢献していることが実感できることで、「ちゃんとお客様に自分の想いが伝わっているんだ、自分の接客がお客様の役に立っているんだ」という達成感が湧いてきます。こうして店舗スタッフがオンライン接客を行うモチベーションを保つことができます。

可視化されたスタッフのEC貢献度をもとに本社の皆さんがそれを適切に評価することで、「オンライン接客をしても自分の評価にならない」とスタッフが消極的になることなく、前向きにオンライン接客に取り組めるでしょう。「店舗スタッフの評価」があるからこそ、今日のSTAFF STARTの成長があると言っても過言ではありません。

第2部:AI&ARを活用した化粧品販促の最前線

続いて、パーフェクト株式会社 代表取締役の磯崎順信氏が、AIとARを駆使した最新バーチャル接客について説明しました。パーフェクト株式会社は、350以上のコスメブランドをパートナーに持ち、10万点以上のアイテムを世界60ヶ国以上で展開。本社のある台湾、日本、アメリカ、ヨーロッパなどに拠点を持ち、コスメやファッションブランド向けに、高度な技術を活用したバーチャル体験サービスを提供しています。

新しい自分発見につながる、AIやARによるバーチャル体験を提供

磯崎氏:私たちは、AIやAR技術を使ったバーチャルメイクや肌診断のプラットフォームを提供しています。現在、20万を超えるアイテムの色味やテクスチャーなどの商品データをプラットフォーム上に所有しています。ユーザーがオンライン上で何らかの商品を試した回数は300億回を超え、ユーザーとのエンゲージメントを生み出すサービスとして世界各国で導入されています。

ARとは、画像解析や位置情報を活用することで、現実世界の映像にさまざまな情報を表示できる技術です。たとえば、コスメブランドやリテーラー向けに開発した「ビューティーアプリ」は、店頭で販売されているメイクアイテムを使用してリアルタイムでバーチャルメイクを体験することができます。色彩や質感、光の当たり方まで忠実に再現するので、メイクを実際に試しているかのような体験が可能です。

また、AIを使ってヘアカラーの色味が試せる「バーチャルヘアカラー」は、髪を傷めることなく自分に似合う髪色を見つけることができるサービスです。フレームバイフレームで髪の場所を認識するため、動いたり手ぐしをしてもカラーがズレません。さらに、カラコンなどのアイウエアや腕時計などのバーチャルトライも提供しています。

女性が店舗でメイクの色味を試す際、一般的に2〜3色くらいが平均ではないでしょうか。でも、もっと色味を気軽に試せて「こんな色も似合うんだ!」という新しい出会いがあれば、たとえECでも、思わずポチッと買いたくなるはずです。

もちろん、バーチャルだからといって1000色、2000色試すのは現実的ではありません。お客様一人ひとりに合った色味をいかに効率よく提案できるか、という課題を解消すべく、数年前からAI開発にも着手しました。肌質や肌色、骨格など顔の特徴を診断することで、ブランドさんに「このお客様はこんな顔ですよ」という情報をお伝えし、最適なレコメンデーションを提案していただくというものです。私たちはプラットフォーマーとしてのメリットを最大限に活用し、他のプラットフォーマーと連携しながらフロントエンドでAIやAR技術を提供する。そして、バックエンドでは商品データを提供する。こうして、お客様に様々なアイテムをお試しいただけるECサイトが提供できると考えています。

弊社のソリューションを利用いただくことで、お客様との強いエンゲージメントを構築する上で重要な「滞留時間の増加」にもつながります。自社ECサイトに少しでも長く滞在していただきたいというブランドさんは多いはずです。ただ、多くの時間とリソースを投資してコンテンツを作ったとしても、10〜20%アップ程度の効果しか得られないというケースも少なくありません。一方で、弊社サービスの利用企業は、滞在時間 2〜4倍もの効果を実現しています。

第3部:コーセーがDXで実現する新たな顧客体験と新たな働き方

次に、株式会社コーセーの進藤広輔氏が登壇。進藤氏は、クラウド業界やAWSなどで情報システムの知見を培われた後、現在はコロナ禍の化粧品業界で「ビジネスとシステムの架け橋」として、オンラインカウンセリングの新たな挑戦に取り組んでいます。コロナ禍で求められる業界の変化と挑戦についてお伺いしました。

ポジティブでアグレッシブな店頭カウンセリングのDX化に挑戦

進藤氏:コロナ禍で、化粧品業界にも大きな変化が求められています。「未知の世界に突入した」と言っても過言ではありません。店頭で行われていた美容カウンセリングが、緊急事態宣言による臨時休業や時短営業などで難しくなっています。タッチアップはもちろん、テスターも廃止。商品陳列棚には飛沫防止シートがかけられ、美容部員が自宅待機を強いられたり、出勤日数が制限された時期もありました。さらにマスク生活によって、消費者のメイクへのモチベーションが減ったことも課題でした。

そんなコロナ禍を私たちはチャンスだと捉え、今まで美容部員がやってきた“当たり前”を変えるという、極めてポジティブでアグレッシブな取り組みにチャレンジしました。まず最初に着手したのは、通話や映像の品質改善です。オンラインによるコミュニケーションの質にとことんこだわることで、お客様はもちろん、美容部員や店舗にとっても付加価値をもたらす、新しいカウンセリングスタイルが実現できると考えました。これは「リアルであることを前提としない」という大きな目標を掲げて進めたプロジェクトでもあります。

新たな接客スタイルを確率する上で、まず大きなポイントとなったのが「働き方改革の実現」でした。単にシステムを導入すれば良いというものではなく、美容部員の働き方を見直し、働く機会を提供しなければならないと考えたのです。インターネットやクラウドを活用することで、場所や時間、環境などの物理的な制約がなくなることを徹底的に活用しようと思いました。そして「店頭でしかできなかった接客を可能にしたい」ではなく「店頭のレベルをはるかに超えた接客を実現したい」という発想に行き着きました。私たちのカウンセリングモデルの確立は、美容部員さんなくしては語れません。これまで美容部員がやってきたビジネスにデジタルをかけ合わせることで、大きくDXを進めていこうという取り組みでした。

改めて分析した結果、店頭でしかできないタッチアップは実は接客全体の20%に過ぎないことが明らかになりました。残りの80%はお客様の肌質を認知したり、分析をしたりといった、カウンセリングに費やしているということです。テスターありきで考えていたビジネスモデルが、実はたったの20%だったんです。みなさんも店頭で接客されたご経験があるかもしれませんが、最終的な判断はお客様にゆだねられます。「いかがですか?」このひと言に集約されるんです。

ただ、オンラインではこれが通用しません。デジタルの世界では、「見る」「聴く」の2つで先ほどの80%をよりしっかりと補っていく必要があります。だからこそ、感覚的な表現を徹底的に言語化して、より具体的にお伝えするようにしました。こうして完成したサービスがコスメデコルテの「パーソナルビューティーコンシェルジュ」です。

パーソナルビューティーコンシェルジュは、店頭の接客をオンラインでもリアルに体験できるシステムです。映像や通話の鮮明さが、従来とははるかにレベルの違う品質に仕上がっています。接客一つひとつをすべてアプリケーション化していて、それらを組み合わせてお客様に提供しています。ただ、システムそのものに価値があるとは思いません。それがお客様に届いて接点ができることで、初めて価値が見出せると考えています。

第4部:パネルディスカッション・質疑応答

最後に、コスメ業界を中心としたDX戦略について、磯崎氏と進藤氏、小野里の3名がディスカッション。4つの議題に対して、3人がそれぞれの現場で感じていることや最新情報を交わしました。1つ目の議題は「オンラインカウンセリングやオンライン接客など新しいツールやDXを推進するにあたって課題になること、そしてそれをどう解決するか」です。

従来の価値観を手放す、業界全体のマインドチェンジが求められている

進藤氏:まずはみなさんが「オンラインとは何か」という認識を正しく持っておく必要があると思います。「オンライン=グローバル」で、すべての垣根がなくなる瞬間です。あらゆる情報が場所の制約なく集められて、活用できるようになるのがオンラインの世界。ですから、ECやリモート、オンライン接客といった限定的、局所的なものではなくて、もっと広範囲に捉えるべきだと考えています。オンラインがグローバルにすべて賄える可能性があるとしたら、どこまでできる範囲が広がりますか?というのを突き詰めて考えることが、私はもっとも重要だと思っています。これまで自分の頭の中や手元にあるものしか使えなかったのが、オンラインではすべての情報を瞬時に集めて「情報源」にだってなれる。DXを推進する人たちが、そういった空間や世界を目指せるかどうかが一番大事で、難しいところなんだと思います。

磯崎氏:私たちのようなソリューションは、利用企業の販売チャネルも幅広いですし、色々な部署にまたがるじゃないですか。そうすると、誰が主導するのか、どの予算を使ってやるのか、それぞれで交渉が発生してなかなか前に進まなかったんです。でもここ数年で、どのブランドさんも横串に、部門の垣根を超えて取り組みを進められるようになって、いろいろな課題を解消されているなと感じます。

小野里:僕の場合は、1600ブランドを導入する過程でたくさんの障壁がありました。STAFF STARTを立ち上げた5年前は「オンライン上にスタッフを置く?何を言ってるの?」と言われたことも。なぜそう思うのか、理由を聞くと「ECサイトにスタッフが出てくると、ブランド毀損してしまう」と言うんです。今まで、ブランドをオンライン上で固めて見せてきたという経緯があるからでしょう。だからこそ最初は「店頭でもっともお客様と向き合ってきたスタッフが、オンラインに出てくるのは当たり前なんですよ」とお伝えすることに苦戦しました。でも今はそれが当然になりましたね。

進藤氏:コーセーのパーソナルビューティーコンシェルジュも、オンライン接客の一つです。ただ、オンラインで接客することに抵抗がある人が多いのも事実。もちろん、セキュリティを含めた不安の払拭は、システムを作る側にとっては必要だと思います。ただし、やはりある種のマインドチェンジは促していかなければなりません。従来の商習慣や制度、しがらみや越えられない壁みたいなものがあるんですよね。でも、業界の垣根を超えて市場全体がオンラインに仕事の機会を求めることで、どれだけの可能性が広がるか。経営のトップから営業の現場まで、すべての人がきちんと向き合う必要があるのではないでしょうか。コーセーでは上から下まで、この大きな変化を受容する文化がありますね。

2つ目は「コスメ業界において、消費者とデジタルを通じてコミュニケーションをとる上で重要なポイントとは?」という議題です。世界中で300以上のブランドと取引をされている磯崎氏は、先端の技術を使っていかに「人を介したレコメンデーション」を大切にできるか、に注力したいと話します。

CVRといった直接的な数字に囚われすぎないことが大切

磯崎氏:コスメ業界において、ECの売上はまだ全体の6%程度なんです。約9割の方々は、いろいろなWEBサイトを訪れて吟味はしますが、最終的には店頭で商品を買う傾向にあります。でも、日本のデジタル技術やECサイトが魅力的ではないのかというと、まったくそうではない。STAFF STARTやパーソナルビューティーコンシェルジュをはじめ、最先端の技術を取り入れたサービスが次々に生まれています。私たちがグローバルで展開している「バーチャルトライアル」でも、最もエンゲージメントが高かったトップ3は、日本のブランドさんのWEBサイトでした。しかも、4位と5位は、世界で誰もが知っているアメリカの有名ブランドです。日本のユーザーは、STAFF STARTの投稿や口コミ、レビューを見て、ブランドサイトやバーチャルトライアルを楽しんでから、店頭で購入するケースが一般的です。だから、ブランドとしてはコンバージョンレートといった直接的にトラッキングできる数値よりも、最終的にオンラインでもオフラインでも、良いユーザー体験を提供して購入につなげられるる環境を作ることが大切なのではないでしょうか。あとは、一人ひとりの消費者の中にある「買いたいものリスト」のどれだけ上位に行けるのか。そんなエンゲージメントを構築する必要があると思います。

進藤氏:こういう世の中になって、デジタルの良さがどんなに進んだとしても、やっぱり商品の良さが勝負だと思うんです。そして、お客様の価値体験をどれだけ良いものにしていくか。ここを徹底的に考える必要があると思っています。ひょっとすると、デジタルが発展したことで、本来人間がやらなきゃいけなかった仕事が疎かおそろかになってしまう可能性だってある。オンラインの世界に入るとユーザーが気軽にお店に入れる分、勝手に使うシーンがあるからです。今だからこそ、化粧品や接客がどうあるべきなのか、それらを通じてお客様をどう幸せにしていくのか。ということを、もっと突き詰めていきたいですね。

小野里:僕らは、スタッフさんをDX化することで、最終的にはお客様とつながってほしいという思いがあるんです。コーディネートやメイクシーンを撮影した写真に、お客様が興味を持つだけで終わってしまうなら弱すぎます。これでは単なる「コンテンツコマース」になってしまいます。そうではなくて、「スタッフコマース」にしていくのが重要だと捉えているんです。スタッフがいかにお客様に対してオンライン上で接客できるか。そこが課題だと考えています。

磯崎氏:やっぱり美容部員さんの「お似合いですよ」のひと言に勝るものはないんですよ。人のレコメンデーションがやっぱり強い。だからこそ、美容部員と消費者をうまくつなげるSTAFF STARTは素晴らしいと思います。私たちは人の心のこもったレコメンデーションを、いかに技術を使ってお届けできるか。そんな顧客接点が生まれるテクノロジーを提供していきたいですね。

3つ目は、コロナ禍、SNSの多様化をはじめとする時代の変化とともに、企業の情報発信の手段が変化した現在、顧客が抱える課題・抵抗をどうキャッチし、サービス設計を行うか、をディスカッションを行いました。

先行するテクノロジーに対して、どれだけ人間の知恵が上回るか

進藤氏:「チャネルの多様化」 は言葉で言うのは簡単ですが、TwitterやFacebook、LINE、InstagramなどSNSをひと揃えしたと同時に、サービスが向上するかというとそういうわけでもありません。コミュニケーションが活性化するとも限らない。やはり原点は、ツールを人間がどう使いこなしていくか、使う人間をどう教育するか、どう進化させていくかが重要だと思います。現状は、テクノロジーがすごく先行してしまっているように感じます。人間の知恵が技術を上回る世界を作らないと、お客様と1対1でダイレクトに結びつける環境を作り出すのは簡単ではありません。これからの時代は、デジタルネイティブ世代がもっと前面に出てきてものを考え始める。それが当たり前の世界になってほしいですね。やがて、僕がおじさんになって時代遅れになっていけば幸せだなと。

小野里:昭和はモノを作れば売れて、平成は情報でコトが売れるようになりました。するとインフルエンサーが台頭し、消費者レビューが大きくなりすぎて若干スパムになってきた。だからこそ、これからはプロフェッショナルの意見が必要になるだろうと発想してSTAFF STARTを作ったんです。CtoC、BtoC、DtoCと来て、E(エンプロイ)toCだと。従業員であるプロの発言が面白くなるだろうし、SNSでもスタッフさんが社内インフルエンサーになれば良いと思って設計しました。

磯崎氏:パーフェクトでは店頭やパッケージなどにQRコードを設置し、スマートフォンで読み込んで顔写真を撮影するだけで、AIが簡単に肌診断をしてくれる「カンタン肌チェック」を開発しました。肌タイプやライフスタイルに合わせたパーソナルなスキンケア情報をお届けすることで、累計利用回数が500万回を突破しています。このようなデジタルとリアルを複合的に組み合わせたサービスでも、これまでにないユーザー体験を味わえるのではないでしょうか。

4つ目の議題は「未来の顧客体験/顧客エンゲージメントとは?」。三者それぞれが描く未来について語り合いました。

ネットワークも生活インフラのように自然に使いこなす未来へ

進藤氏:電気や水道、ガスを自然に使っているように、ネットワークも当たり前にある暮らしが来ると良いなと思います。まだ今はテクノロジーが先行していて、せっかくツールがあっても使いこなせないから、限定的に細分化されてしまっています。入り口が多すぎて、本当に欲しい商品に遠回りしてたどり着いてしまう可能性もあります。リアルなのかオンラインなのか、それともSNSやAI、ARを使うのか。いちいち検討をしなくても良くなれる空間ができれば、もっと自由に消費者のほうからいろいろな形でアクセスしてくれると思うんです。すべての垣根が取り払われて、お客様が何の抵抗も感じることなく商品に届く。そして、スタッフのほうからも感覚的にお客様にリーチできる。デジタルでそんな世界が生まれたら勝てると思いますし、新しい顧客エンゲージメントにつながっていくのではないでしょうか。

磯崎氏:進藤さんがすごいのは、スタッフさんがデジタルを使いこなせるように教育やコミュニケーションを積極的に行っているところですよね。オンライン専門の美容部員を進藤さんが直接見ていらっしゃる。

進藤氏:30〜40名の美容部員と毎日チャットでやり取りしていますね。「こんなトラブルが起きています」という質問があれば「こうすれば対処できます」と返しますし、こちらから「こういうサービス展開を考えていますがどうですか」と投げかけることもあります。システムやサービスの独りよがりは、避けなければいけませんから。

小野里:EC側から言わせれば、デジタルが入ってややこしくなっているかもしれないけれど、買い手にとって最高の売り手が見つかれば良いなと思います。最寄りの銀座店に自分にとって最高のスタッフがいるとは限りません。鹿児島県在住の方が、北海道在住のスタッフに接客してもらうのが最高だという可能性だってあります。必ず全国のどこかに最高の売り手がいるはずです。そのマッチングができる未来を作りたいですね。

株式会社コーセー ​​情報統括部グループマネージャー
進藤広輔氏
2020年2月コーセー入社。前職のAWSでは企業のDXの礎となるクラウド化の推進を支援。コーセー入社後はコロナ禍への対応をビジネスとシステムの両面から進めると同時に各種DXプロジェクトを牽引。ビジネスとシステムの架け橋として活動中。

パーフェクト株式会社 代表取締役社長
磯崎順信氏
デジタルメディアテクノロジー関連の外資系ベンチャー企業の日本代表等を経て、2015年にPerfectCorp.の日本法人の立ち上げより現職で参画。バーチャルメイクアプリ「YouCam メイク」をはじめ、AI/ARによる新しい消費者エンゲージメントプラットフォームを多くのブランド・小売店・メディアに向け提供し、エコシステムを確立。

株式会社バニッシュ・スタンダード 代表取締役
小野里寧晃
2011年に株式会社バニッシュ・スタンダード設立。EC制作事業に携わる中で「リアル店舗のためのEC」を目指し、販売員のオムニチャネル化を進める“スタッフテック“アプリケーションサービス 「STAFF START(スタッフスタート)」を立ち上げる。令和のカリスマ店員を発掘する「STAFF OF THE YEAR」を主催。 カンブリア宮殿、WBSなどメディア出演多数。

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