バニッシュ・スタンダード/尾田 謙真(以下、尾田):今回は2022年6月にSTAFF STARTとLINE STAFF STARTを導入し、活用推進に取り組んでいる「ライトオン」の安達さんをゲストとしてお迎えしました。まずは安達さんから自己紹介をお願いします。
株式会社ライトオン/安達 和希氏(以下、安達氏):OMO推進部のデジタル販売支援チームで、リーダーを務めている安達と申します。入社から約20年一貫して店舗営業に携わってきましたが、自ら希望してSTAFF START導入のプロジェクトに加わり、現在、運用や推進の役割を担っています。E2C(Employee to Consumer)成功の鍵は店舗スタッフの活躍をいかに支援できるかに懸かっています。今日はそういった観点から当社の取り組みをご紹介できればと思います。どうぞよろしくお願いします。
尾田:早速、STAFF STARTの活用について詳しく伺っていきたいのですが、導入の背景について教えていただけますか。
安達氏:当社では3〜4年前から自社開発のシステムを用い独自のコーディネート投稿に取り組んできましたが、画像が1枚しかアップできないなどUIの課題や、PV・売上集計に関して仕様上の制約があり、多くの課題を抱えていました。そうした中、OMOを推進し店舗とEC双方の集客を促進するツールとして導入したのがSTAFF STARTです。導入によって仕様上の課題が解消されただけでなく、教育や投稿支援など運用そのものに注力できるようになりました。
尾田:導入後の成果状況はいかがですか。
安達氏:自社ECの売上が前年対比143%伸長し、EC化率が1.2ポイント向上しました。アパレル各社はコロナの追い風でEC売上が大きく伸びたのは皆さんご存じの通りですが、その後の直近1年間も成長が鈍化せず売上を伸ばすことができたのはSTAFF STARTのおかげです。CVRに関しても前年比1.2倍にアップしており、手応えを感じています。
尾田:運用面に注力したというのは、具体的にどのような工夫をしたのでしょうか。
安達氏:最も大きく変えたのは、投稿者の見直しです。以前は、全員参加型でしたが継続性や投稿の質の担保が難しかったため、エントリー制に変更したのです。
安達氏:運用にあたって意識したのは、主体性を引き出すプロジェクト設計です。STAFF STARTの投稿メンバーを「STAFF STYLIST」というロール名で呼称し、それぞれが自らの役割を理解し自覚を持てるように工夫しました。さらに呼称の命名を代表の藤原に依頼し発信してもらうことで、社内の認知や理解促進を図りました。
メンバーの募集にあたっては、取り組みの趣旨や期待する役割・要件を細かく明文化した資料を共有し、プロジェクトの中身をあらかじめ伝えることで、真剣に取り組みたいという意欲を持つ人材を選抜できる仕組みとしました。
その一方で、「参画したい」「挑戦したい」と店舗スタッフから思ってもらえるように、マニュアルや研修制度の充実、さらにインセンティブや評価の設定、挑戦や成果に対して認知・賞賛する文化の醸成にも平行して取り組みました。
さらに受け入れ環境が整わず教育が行き届かなかったこれまでの反省から、教育の質を担保するためクラス制を採用。ロールモデルとなる人材の育成に注力し、そこから裾野を広げる作戦に切り替えたのです。その結果、参画メンバーにブランドを代表しているという責任感が芽生え、自ら積極的にプロジェクトを盛り上げる動きにつながりました。また、先輩スタッフの活躍に憧れエントリーするような好循環が生まれています。現在、6期生までのエントリーが進み、約160名の店舗スタッフが参画。店舗カバー率も36%に上がっています。
STAFF STARTの活用を促す研修プログラムでも、意欲を引き出す設計を意識。知識・スキルの習得だけでなく受講者が講師役となる機会を作り、インプットとアウトプット両方できる研修プログラムを用意しました。
具体的には、まず本部が主催する講座を毎月1回、半年間受講してもらい、STAFF STARTの運用を掘り下げて紹介します。その後、講習を修了した店舗スタッフが講師役となり、各地域の店舗に出向き、撮影方法や投稿のノウハウをレクチャーするという内容にしました。このように単に学ぶだけでなく、他のスタッフに教える機会を設けることで、スキルの定着を目指しています。
店舗スタッフがノウハウの共有や相談を気軽に行えるよう、店舗・地域を超えた情報共有の仕組みも設けました。
具体的な施策として行ったのが、リモートオフ会です。当社は店舗が全国にあり、スタッフが直接顔を合わせられる機会も少ないため、リモートで運用上の悩みや事例を共有できる場を作ったのです。この会は参加者からとても好評で、参加率も高い傾向があります。ここで知り合ったスタッフ同士がInstagramでリンクコーデをするなど新たなコラボや企画のきっかけにもなっています。
また、本部が主体となった商品撮影会も企画しています。これは、本部スタッフも含めた複数人のメンバーが集まり撮影やコーディネートを考案する社内のワークショップ企画で、まだプロジェクトに参画していないメンバーをSTAFF STARTに巻き込む機会として活用しています。実際に、私もワークショップに参加しているのですが、様々なアイデアや意見に触れ気づきを得ています。
最後が、店舗スタッフのモチベーションを高める工夫です。当社では、月20件以上のコーディネート投稿を目標として設定し、この目標をクリアしたスタッフに対し、直接売上(※)の2%をインセンティブとして付与しています。また、SNSの流入数やPV数などの指標を含め半年間の実績に対して褒賞する仕組みもあります。
※直接売上:STAFF STARTで投稿されたコンテンツを見て直接購入された売上
さらに、マネジメント層に対してもKPIを課しています。彼らは、直接投稿を行っているわけではありませんが、業務環境の整理やSTAFF STARTに取り組みたいというスタッフを後押しする役割があります。そのKPIとして月20件以上の投稿者80%以上という目標を設定しています。STAFF STARTの投稿は周囲のスタッフの協力や上長の理解や支援が不可欠です。ですから投稿者だけでなくマネジメント層に対しても明確に役割を与えることには意義があります。まだまだ不十分な部分も多く、環境面の整備はこれからも継続的に取り組みたいと考えています。
また、インセンティブの付与だけでなく、認知・賞賛の仕組みもスタッフのモチベーションを高める重要な要素です。その一環として、当社ではアルバイトを含めた全スタッフにSTAFF STARTの投稿に関連したレポートを週次で共有しています。さらに、お客様の反響や好事例を営業の全体会議や社内報で積極的に共有し、店舗スタッフの活躍を社内でも知ってもらえるよう工夫しています。我々本部と現場が同じ目標に向かっていけるよう、密なコミュニケーションを意識。店舗訪問や電話連絡など1対1の関係性作りに注力しています。
また運用体制が整ってきたことから、今後はさらにお客様の快適な買い物環境を整えるべく、まだ使っていないPLAY機能やスタッフレビュー機能、データバンク機能の活用を検討したいと考えています。
尾田:ありがとうございます。また、ライトオンでは「LINE STAFF START」も活用していただいております。ぜひ、そのお話もお聞きしていければと思います。
LINE STAFF STARTとは、LINEの専用アカウントを通じて、店舗スタッフがお客様に個別で接客ができるツールです。メッセージのやりとりだけでなく、自動応答機能など店舗スタッフの顧客対応の負担を減らす機能や、顧客の興味関心を管理した接客など、充実した機能が特徴です。中長期的なリレーション構築やLTV向上に効果的で、購入単価アップや継続率の向上に期待できます。STAFF STARTとの相乗効果も見込めるシステムですが、ライトオンがLINE STAFF STARTを導入した理由は何でしたか?
安達氏:店舗から情報発信できるツールを持っていなかったことが大きな理由です。また、メルマガやアプリの開封率が伸び悩む一方で、公式LINEは開封率が高く、お客様にとって最も身近なコミュニケーションツールであることが導入の決め手になりました。当社では現在、店舗ごとの体験イベントや催事を強化していて、その告知としての活用にも期待しています。
尾田:現状の活用についてお聞かせください。
安達氏:LINE STAFF STARTの活用は、ようやく強化を始めたところで、運用しているのはアカウント保持者の25%です。ただ、先行して活用しているスタッフが主導となってLINE相談会を実施するなど、周囲のスタッフへの働きかけが奏功。直近では店舗スタッフのアクティブ率が、毎月5%ずつ上昇しています。また、LINEの友だち数もアクティブ率の上昇に伴い向上。直近では、月あたりでLINEの友だち数が200〜300名増えており、増加のペースは上がっています。
また友だち登録を伸ばすために、通常の接客時だけでなく、実施しているサービスと連動してLINEを紹介する工夫も行っています。たとえば、当社ではボトムスの仕立て直しを無料で行っていますが、仕上げ完了を連絡するツールとしてLINE STAFF STARTをご案内し、登録の促進と利便性の向上を図っています。メールの場合は迷惑メールに紛れるなど届かないケースもあり、お客様にとって身近で使い慣れたLINEをご案内すると大変喜んでいただけます。
また当社には、ジーンズに関する専門試験をクリアしたジーンズソムリエが160名ほど在籍していますが、そのジーンズソムリエにもアカウントを付与し、オンラインでもお客様の相談に乗れるようにしています。
尾田:実際に活用して、どのような手応えや成果を感じていますか。
安達氏:店舗スタッフと直接つながっているためか、LINE STAFF STARTは他のコミュニケーション手段と比べてブロック率をかなり低く抑えられますし、ECサイトだけでなく来店のきっかけを作るOMO推進するツールとして、大きな期待を寄せています。
以前からスタッフの出勤状況を知りたいというお客様の声が上がっており、出勤状況を知らせるツールとしても、LINE STAFF STARTは有効です。実際、当社が実施している顧客アンケ―トから、LINEを通じた店舗スタッフとのコミュニケーションが来店の誘因となっていることが判明しており、車いすで移動が不自由なお客様から「お店に行く前にLINEで在庫有無を教えてもらえるのは助かります」といった声も頂戴しています。
札幌に普段住んでいるお客様が、出張先の大阪で店舗を訪れた際に対応したスタッフを気に入り、LINEでつながり、札幌に戻った後もLINEでコーディネートの提案や接客を行うという事例も生まれています。これまでお客様との出会いは一期一会だったのが、LINEでお客様とつながれるようになり、新たな接客の形やこれまでにない価値を提供するきっかけになるのではと期待しています。
尾田:当初、私たちがサービスを企画した際も、移動が不自由な方や地理的に離れた方とのコミュニケーションを想定していたのですが、実際のお客様の生の声として評価いただけたのは感慨深いです。最後に、今後のLINE STAFF STARTの活用方針についても教えてください。
安達氏:LINE STAFF STARTは当社も活用を始めたばかりですが、まずは半年後までにアカウントを活用する店舗スタッフを現在の約2倍の70名に増やすことを目標に、取り組んでいきたいと思います。
尾田:楽しみです。今日安達さんから具体的な運用の事例をお聞きして、うまく活用しているスタッフが教える側に回ったり、仲間を巻き込んだり、他の分野に展開していったり、そういった取り組みに運用のヒントがあると感じました。
安達氏:その通りだと思います。誰よりもお客様を理解しているのは店頭のスタッフです。その活動を支え彼らの価値向上に取り組むことが回り回ってお客様に寄り添うことにつながると考えています。これからもそのことを忘れず、さらに取り組みを進めていきたいです。
尾田:安達さん、本日は貴重なお話をありがとうございました。
株式会社ライトオン 営業本部 OMO推進部 デジタル販売支援チーム リーダー
安達 和希
2002年 株式会社ライトオンに入社。約2年間の店長業務を経て、関西・中四国・関東地域のエリア・ブロック管轄を17年間担当。2023年8月よりSTAFF STARTの導入に伴い営業職から現職へ異動。
現場での経験を活かし、スタッフ教育に重点をおいてE2C(Employee to Consumer)の推進すると同時に、会員制度・スタッフを中心としたデジタルコンテンツを担当。
株式会社バニッシュ・スタンダード BizGrowth Unit Customer Success
尾田 謙真
新卒で都内のITベンチャー企業に入社。 広告事業のアカウントセールスやSaaSのフィールドセールスなど一貫して法人営業に軸足をおきつつ、マネジメントや子会社の立ち上げ等も経験したのちに、バニッシュ・スタンダードに参画。
現在は主に、既存の導入顧客様向けにSTAFF STARTのお取り組みをより拡大するためのご提案を担当。自身も過去学生時代にはアパレルの販売員を長く経験したこともあり、小売業界の課題解決に少しでも力になるべく活動中。